小林多喜二生誕100年・没後70周年記念シンポジウム開催報告

  近代日本文学史に「蟹工船」「党生活者」などで近代文学の高峰を築いた小林多喜二(1903〜33年)の生誕100年・没後70周年記念シンポジウム「多喜二の文学は語りつくされたか?!」を11月30日、東京・築地の浜離宮朝日多目的ホールで開催した。(各講演要旨はこちら

第二部・パネルディスカッションの模様
第二部・パネルディスカッションの模様
  このシンポジウムは、多喜二の生誕100年と、白樺文学館多喜二ライブラリーを東京・麻布十番に開設したのを記念し、ライブラリーが主催。日本社会文学会、朝日新聞社、小樽商科大学の三者による後援を得て実現した。中国、韓国、アメリカの研究者を含み、白樺派やプロレタリア文学の研究者など、様々な立場の研究家、約350人が一堂に集まったことが特色。

 当日は文芸評論家の澤田章子さんが司会。主催の佐野力・白樺文学館多喜二ライブラリー館長、後援の秋山義昭・小樽商科大学学長、佐々木憲昭・小樽商科大学卒業生で日本共産党衆議院議員があいさつした。

 佐野館長は、主催者あいさつのなかで多喜二ライブラリー設立の目的について、

  1. 多喜二関連資料収集・目録作成 コンピューターによるアーカイブ
  2. 本の出版と支援
  3. シンポジウム開催と研究者の育成
  4. インターナショナルな活動  中国、韓国、米国、ロシア・・・
以上4つを示した。

 シンポジウムは、第一部「麻布十番と多喜二を結ぶもの」、第二部「小林多喜二と志賀直哉」からなり、第一部は、劇団前進座の女優今村文美さんが土井大助作詩「麻布の坂道―小林多喜二生誕100年(10月13日)によせて―」の朗読でオープン。

 北大名誉教授で市立小樽文学館館長の▽亀井秀雄さんが「大熊信行がとらえた多喜二と伊藤整」、文芸評論家の宮本阿伎さんが 「多喜二が描いた新しい女性像」 と題して報告した。

 第二部は、多喜二ライブラリー制作のビデオ「映像・多喜二の文学は語りつくされたか?!」についで、紅野敏郎・日本近代文学館常務理事・山梨県立文学館館長・早大名誉教授 「志賀直哉と小林多喜二の接点−直哉の多喜二宛書簡などを中心に」 、浜林正夫一・橋大名誉教授 「多喜二の作品から読み解く戦前の日本社会」 、松澤信祐・文教大教授 「多喜二と近代作家との接点−芥川、志賀を視野において-」 、伊豆利彦・横浜市立大名誉教授 「戦後の直哉の心に生き続ける多喜二の像−「灰色の月」前後−」 の4件の研究が報告された。これらの報告では、当館所蔵「多喜二宛て志賀直哉の手紙」、「大熊信行宛て多喜二書簡」2通などを素材に、志賀直哉研究者と多喜二研究者がそれぞれの研究の到達にたって、研究成果を交わした。

「多喜二研究者を囲む夕べ」にて
「多喜二研究者を囲む夕べ」にて
  続いて第二部講師4人によるパネルディスカッションが行われ、「多喜二が志賀直哉に傾倒した一番の理由は?」「有島武郎『カインの末裔』と多喜二の『東倶知安行』は同じ地域を舞台にしていますが、影響はあったのでしょうか?」「海外での多喜二や日本のプロレタリア文学への関心は?」など、事前によせられた参加者からの疑問や質問にこたえた。

 シンポジウム終了後、夏の次回シンポジウムを展望し、「多喜二ライブラリー開設記念 ― International 多喜二研究者を囲む夕べ」を開催した。

(12/19 事務局:佐藤三郎)


[2003/12/26]

白樺文学館 - 小林多喜二の書簡 常時展示中

時代を撃て・多喜二