「戦争と文学−いま、小林多喜二を読む」刊行のお知らせ

この度、9冊目の「白樺文学館多喜二ライブラリー特選図書」として、伊豆利彦先生(横浜市立大学名誉教授)の、小林多喜二(1903〜33)の文学世界の書き下ろし、『戦争と文学−いま、小林多喜二を読む』を株式会社 本の泉社から出版しました。


「戦争と文学」表紙
「戦争と文学」表紙
本書は、当ライブラリーが開催し大きな反響を呼んだ「生誕100年記念小林多喜二国際シンポジウム」についての書き下ろし批評を巻頭に、これまで著者が、小林多喜二の文学とその生涯について語った主要な論文を収録しています。

伊豆利彦氏は「はじめに」で、
私は戦後はじめて多喜二を知ったときから、さまざまに多喜二について考えてきた。
本書には、はるか以前に書いたものから、最近書いたものまでがおさめられているが、私は時代の現実に切実にかかわりながら、たえず、現代に生きる新しい多喜二像を探り求めてきた。日本が戦争に踏みこみ、国のためということが強調されて、国家権力が人人の生活をおびやかしはじめた現在、これらとはげしくたたかった多喜二の生涯と文学は、読者の胸に新しい生命をもってよみがえるにちがいない。本書がそれにいくらかでも役立てばうれしい。
とその抱負を述べられています。


●本著3つの特徴

1.本著は、伊豆先生から若い世代の友にむけたメッセージです。それは、この著書の「若き多喜二の彷徨と発見」一篇を読んでも強く感じられるところだと思います。「闇があるから光がある」と恋人・田口タキに宛てた手紙に見られるように、真摯にその時代の暗黒と真向かった若き青春の日々をたどることは、その後の多喜二の生き方を考えるうえでも貴重な導きとなっています。

2.「生誕100年記念小林多喜二国際シンポジウムで考えたこと」は、現在を生きる私たちの時代の、戦争と文学をめぐっての状況を踏まえた、多喜二を通じた現代日本と世界の文明批評として重要です。多喜二を英雄視することなく、人間・多喜二の光と闇から学ぶことは、今日の時代を生きる私たちの力となるものと確信します。

3.多喜二が文学修行を始めた最初期に、大きな影響を受けた志賀直哉との交流をたどっている「志賀直哉と多喜二」は、多喜二文学の源泉を明らかにし、さらに「戦後の直哉の心に生き続ける多喜二の像――『灰色の月』前後」は、直哉が多喜二からどのような影響を受けていたかをも明らかにし、志賀直哉研究家に対し、「多喜二に対して、直哉はどういう考えをもっていたのかということを、はっきりととらえる」ことの必要性を提起しています。プロレタリア文学の現在的意味を考える「小林多喜二と蔵原惟人」「プロレタリア文学―存在と意味―」とともに、人生の糧として文学を愛する人々に、時代を超えて現在に生きる重要な問題提起です。

以上のような問題意識をもって、編んだのがこの著書です。


島村輝(女子美術大学教授)は、
「シンポジウムで考えたこと」は伊豆先生による、多喜二を通じての現代日本と世界の批評であると感じました。「若き多喜二の彷徨と発見」はぼくが今から25年も前に卒業論文を書こうとしたとき、最も影響を受けた論文の一つです。今読み直しても感銘を受ける切り口、語り口だと思います。伊豆先生の多喜二に関する数ある論文の中からこれを選択された佐藤さんの見識にも同感です。(中略)第二部のプロレタリア文学そのものを巡っての問題、第三部の志賀と多喜二の関係についても、伊豆先生の情熱が強く伝わってくる文章が選ばれていると思いました。」
と述べられ、本著の意義を強調されています。

また、『週刊 金曜日』2005年8月12日付(no.569号)は、「きんようぶんか読書」の「編集部が選ぶ3冊」に「国家権力が暴走を始めたいまだから」と題して本冊を取り上げ、
「暗黒の時代を生き、自己の内部の矛盾を見つめ、時代の苦悩を生きた小林多喜二。その時々の現実に切実に関わりながら多喜二像を探し求めてきた著者が、30年間に書き綴った論文から代表的なものを収録。国家が人々の生活を脅かし始めた現代だから、その生涯と文学に注目したい。」
としています。


●書籍詳細

『戦争と文学−いま、小林多喜二を読む』
伊豆 利彦 著

■発行所・・・白樺文学館多喜二ライブラリー
■発売元・・・本の泉社
■A5判 224頁 定価 2,000円(消費税込)

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●著者紹介

伊豆利彦 (いず・としひこ)
大正15年11月10日生まれ。横浜市立大学名誉教授。日本文学協会、日本近代文学会、社会文学会、日本民主主義文学会 会員。

伊豆利彦
【本件に関するお問い合わせ先】
白樺文学館多喜二ライブラリー 学芸員 佐藤三郎
〒270-1153千葉県我孫子市緑2-11-8
TEL:04-7169-8468 FAX:04-7169-1837


[2005/08/26]
白樺文学館 - 小林多喜二の書簡 常時展示中

時代を撃て・多喜二