第1回「中国 小林多喜二国際シンポジウム」開催報告

◇大会名 「中国 小林多喜二国際シンポジウム
河北大学(河北省保定市合作路1号 王洪瑞学長)が主催。

島村輝基調報告
島村輝基調報告
小林多喜二の「反戦・平和、国際主義の文学精神」を主なテーマに、中国で初の「小林多喜二国際シンポジウム」が河北大学主催で2005年11月12,13の両日、河北省保定市の同大学を会場に、中国全土の15大学41名、日本から5大学3団体31名、韓国から1大学、一般参加者約100名、約180名の参加で開催された。

中国: 河北大学国際交流センター、外語教学与研究出版社、河北大学科学技術処、日本: 日本社会文学会、白樺文学館多喜二ライブラリーが協賛、小樽商科大学、日中友好協会 HBC(北海道放送株式会社)が後援。
同シンポジウムは、中国の抗日戦勝60周年の節目を記念し、中国への侵略戦争に反対した日本の代表的な作家・小林多喜二(1903-33)の文学を顕彰し、日中文化交流を深めることを目的としたもの。

開会式で、孫景元副学長が「多喜二が唱えた反戦・平和・国際主義の精神は、反ファシズム世界戦争の勝利60周年にあたり、いっそう現実的な意義をもっている」と歓迎のあいさつをしたほか、呂元明・東北師範大学名誉教授の来賓あいさつでは、河北大学の故雷石楡教授と、多喜二の戦友で日本人民反戦同盟をリードした鹿地亘との太い絆が明らかにされた。

シンポジウムでは、日本、女子美術大学の島村輝教授が「『満州事変』後の世相と多喜二晩年の仕事」、中国の王成・首都師範大学助教授が「反戦小説としての『沼尻村』」基調講演し、この後、全体会議および分科会で計14件の研究が報告され、さまざまな角度から意見交換が行われた。

王成基調講演
王成基調講演
これらの成果を受け、総括シンポジウムでは日本の女子美術大学の島村輝教授が「小林多喜二の文学は、その原点として、侵略戦争に反対する精神が原点に置かれているばかりではなく、生涯を通じて深く貫かれていることが確認され、魯迅と多喜二などの交流に日中侵略戦争反対の国際精神で結ばれた文学の意義が再確認された」ことを強調するとともに、ともに基調報告に立った中国の首都師範大学の王成教授が、「シンポジウムの成功を私たちの励みとして確認する。今回は日本語をシンポジウムの使用言語としたが、次回は中国でやる以上、中国語でやりたい。それこそが中国での主体的研究を広げるシンポジウムとなる。そのため、河北大学に<中国小林多喜二研究会>を発足させる準備を始める」と述べ、今大会の成果を確認するとともに、今後の日中文学交流を深める展望を確認した結語を述べた。

※このシンポジウムの報告をまとめた『中国で蘇る小林多喜二の文学―中国 小林多喜二国際シンポジウム論文集』(A5版 300ページ)は、来春刊行予定。
お問い合わせは、TEL:04-7169-1847 FAX:04-7169-1837  Mail:sabu0326@takiji-library.jp へ。
              

日本のプロレタリア作家・小林多喜二は、秋田に生まれ、北海道で育ち、その代表作に「一九二八年三月十五日」「蟹工船」「不在地主」「東倶知安行」「工場細胞」「安子」「転形期の人々」の諸作がある。

分科会
分科会
多喜二はこれらの作品で、近代化を進める日本帝国の朔北の地で、過酷な労働に使役された労働者・農民の悲哀と、そこから立ち上がる人間像を描き、満州事変前後には、「沼尻村」「党生活者」「地区の人々」などで、農村の主要な働き手を徴兵される貧しき農村、軍需工場での過酷な労働の現実と、首切り反対のたたかいを指導する活動家集団の人間群像を描いたことで、近代日本文学史に燦然と輝く”プロレタリア文学”の一時代を築き、1930年代の中国文芸界にも大きな影響を与えたことで知られる。

今回の中国での「小林多喜二国際シンポジウム」では、白樺文学館多喜二ライブラリーが発掘した新資料に基づき2003年から2度にわたって開催した「生誕100年記念小林多喜二国際シンポジウム」の成果を受け、特に小林多喜二の「反戦・平和・国際主義」の文学精神をたどることを主テーマにした。

シンポ会場風景(その1)
シンポ会場風景(その1)
中国から、北京大学、天津外国語学院、東北師範大学、遼寧大学、首都師範大学、洛陽外国語学院、北京第二外国語学院、南開大学、燕山大学、黒龍江大学、南京農業大学、上海海事大学、唐山師範大学、華僑大学、河北家経済貿易大学などの日本語・日本文学研究者41名が集まったほか、日本からも小樽商科大学、横浜市立大学、女子美術大学、秋田県立大学、早稲田大学、日本社会文学会、多喜二・百合子研究会、白樺文学館などから31名、韓国からはキョオン大学からの研究者、一般参加者約100名、計約180名が一堂に集まった。
中国、日本、韓国、3カ国の研究者から計14件の報告、アメリカ・シカゴ大学ノーマ・フィールド教授からもメッセージが寄せられた。

シンポ会場風景
シンポ会場風景(その2)
研究発表では、小林多喜二の「一九二八年三月十五日」、「蟹工船」、「東倶知安行」「沼尻村」、「党生活者」の作品世界が分析され、その文学が当時の日本社会の現実を踏まえた世界と人間を織り成す言語と、様々な人間群像をとらえた創作方法、態度に光が当てられた。また、張如意・河北大学教授の「中国の大学生からみた小林多喜二」の文学意識調査分析など、新しい手法による成果がえられた。

初日の夜の交流会では、資料として、生誕100年を記念して製作されたばかりの多喜二のドキュメント映画「時代を撃て・多喜二」が中国語の字幕入りで初公開され好評だった。(佐藤三郎)


同シンポジウムの要項は以下の通り。

大会名 「中国 小林多喜二国際シンポジウム」
主催 河北大学 外国語学院 中国河北省保定市五四東路
準備
委員会
顧問 姜煥柱・河北大学国際交流センター長、教授)
松澤信祐・河北大学名誉教授
委員長 李佐文・河北大学外国語学院院長、教授)
委員 劉志強、劉立紅、王鳳

 
河北大学・
運営委員会
責任者 張如意(副院長)
委員 李芳(助教授)、太陽舜(助教授)、松澤信祐(河北大学名誉教授)、李 国寧、高橋三男、大野清司、陳君、李昆、張維峰
tel: 0086-312-5079647
fax: 0086-312-5079647
HP: http://www.hbu.edu.cn/
Email: ruyizhang2341@yahoo.co.jp
協賛
中国 河北大学国際交流センター、外語教学与研究出版社、河北大学科学技術処
日本 日本社会文学会、白樺文学館多喜二ライブラリー
後援 小樽商科大学、日中友好協会 HBC(北海道放送株式会社)
日時 2005年11月12(土)、13日(日)の両日
場所 中国 河北省保定市 河北大学


■研究発表者

あいさつ
孫景元・河北大学副学長
修剛・天津外国語学院院長
呂元明・東北師範大学名誉教授
渡辺貞夫・白樺文学館副館長

基調講演
中国 王成・首都師範大学助教授「反戦小説としての『沼尻村』」
日本 島村輝・女子美術大学教授「『満州事変』後の世相と多喜二晩年の仕事」

中国からの研究発表
●張朝柯(遼寧大学教授):「中国人の国際的友人としての小林多喜二」
●王鉄橋(洛陽外国語学院教授)「日本文化と小林多喜二の遭遇」
●太陽舜(河北大学助教授):「『蟹工船』の話し言葉の表現特色−−話し言葉から『蟹工船』を読む」
●張如意(河北大学教授):「中国の大学生にから見た小林多喜二―アンケート調査から」
●田鳴(外交学院助教授)「小林多喜二が描いた人物―『党生活者』について」
●呂興師(遼東大学教授)紙上発表「異彩を放つ母親の形象化―小林多喜二とゴーリキーの母親像の比較―」
●李均洋(首都師範大学)紙上発表「蟹工船論」
の計7件

日本の研究発表
○松澤信祐(河北大学名誉教授)「反戦平和と国際主義に殉じた作家 小林多喜二」
○伊豆利彦(横浜市立大学名誉教授、河北大学名誉教授)「<何代がかり>の運動と<火を継ぐもの>」
○三浦光則(多喜二・百合子研究会 )「文学をたたかいの武器に―『蟹工船』『不在地主』『工場細胞』を中心に」
○高橋秀晴(秋田県立大学助教授)「小林多喜二と松田解子」
○大和田 茂(日本社会文学会)「プロレタリア文学作家への道―習作時代の差異と移行について」
○倉田 稔(小樽商科大学特任教授 )「小林多喜二の小樽時代、および最近の研究文献」
○荻野富士夫(小樽商科大学教授 )「小林多喜二の生きた時代と現代」
○佐藤三郎(白樺文学館多喜二ライブラリー学芸員 )「〈文学〉が〈戦争〉を描く意味―多喜二『党生活者』と旧日本軍の生物化学戦準備―」
の8件

韓国からの研究発表
●李 修京(東京学芸大学助教授)「この時代の‘クラルテ’としての多喜二と尹東柱」
●朴真秀(キョンウォン大学教授)「小林多喜二『一九二八年三月十五日』の視点と語り」
の2件。

懇親会であいさつする張如意教授.
懇親会であいさつする張如意教授
の計17件の研究発表が2つの分科会に別れて行われ、それぞれ研究協議が行われた後、総括シンポジウムが行われ、基調報告を担当した王成、島村輝両氏の結語が行われた。

また、初日の11日午後8時より、Kei,Sugar作詞・作曲の「多喜二へのレクイエム」の演奏、小林多喜二生涯を描いた、小林多喜二生誕100年記念のドキュメンタリー映画「時代〈とき〉を撃て・多喜二」(中国語字幕入り 88分)の上映が行われ、同映画制作委員会を代表して、池田博穂監督が舞台あいさつを行った。


多喜二シンポ記念撮影
多喜二シンポ記念撮影

以上 

白樺文学館多喜二ライブラリー内 多喜二シンポ日本事務局 
(広報担当・佐藤三郎) 
〒270-1153千葉県我孫子市緑2-11-8
TEL:04-7169-1847 FAX:04-7169-1837
Mail:takiji_2005@mail.goo.ne.jp
Mail:sabu0326@takiji-library.jp


[2005/12/13]
白樺文学館 - 小林多喜二の書簡 常時展示中

時代を撃て・多喜二