講談社文芸文庫から『老いた体操教師・瀧子其他』が刊行

老いた体操教師・瀧子其他
『老いた体操教師・瀧子其他』表紙
小林多喜二(1903~33)の初期作品集――『老いた体操教師・瀧子其他』が、10月10日、講談社文芸文庫から発売されました。

収録は、多喜二が17歳から24歳までの7年の間に、『小説倶楽部』『文章倶楽部』『新興文学』誌に投稿し掲載された「老いた体操教師」、「龍介と乞食」、「健」、「藪入り」、「龍介の経験」、「女囚徒」(戯曲)、「最後のもの」、「瀧子其他」のほか、小樽高商(現小樽商科大学)の校友会会誌や、小樽拓殖銀行に勤めながら主宰した同人雑誌『クラルテ』などに発表した「継祖母のこと」、「ロクの恋物語」、「ある役割」、「暴風雨もよい」、「駄菓子屋」、「人を殺す犬」、「万歳々々」、「田口の『姉との記憶』」の16篇。「ロクの恋物語」、「駄菓子屋」は、当時、我孫子に住んでいた志賀直哉に批評を求めた作として、知られています。

作品を選定した曽根博義・日本大学教授の「自己と他者を見つめる眼」と題した解説、佐藤三郎・白樺文学館多喜二ライブラリー学芸員編の「年譜・著書目録」が付されています。

表題作の「老いた体操教師」は、この春、曾根博義教授の手で86年ぶりに発掘され、話題となっている最初期の作。「瀧子其他」は、生涯の恋人の名を冠し、虐げられる弱き者への優しい眼差しと、その苦しみの根源への鋭い問いを秘めた好編。

多喜二初期作品集の刊行は、昭和6(1931)年、改造社から刊行の『東倶知安行』以来、76年ぶりの刊行で、新発見の「老いた体操教師」の収録はもちろん、これまで「習作」として扱われがちであった「初期作品」を一冊に編み、入手しやすい文庫本で提供してくれたことは画期的です。

同書の解説で曽根博義教授は、「小林多喜二の文学の高い稜線が「一九二八年三月十五日」や「蟹工船」以下の中篇や長篇にあることはいういうまでもない。しかしこれらの初期作品がそれらの高峰の影に隠れてしまうことはいかにも惜しい。それらはやがては高い尾根に辿り着く里程標であると同時に、一つ一つが短篇としての独立した価値を持っている」と強調しています。

29歳で権力に虐殺されたプロレタリア作家の多感な青春の碑として、いま、青春を生きる世代にもひろく読まれることが期待されます。

文庫版、286ページ、定価1,365円(本体1,300円)。問い合わせなどは、電話 03-5395-5817の講談社へ。

[2007/10/10]

白樺文学館 - 小林多喜二の書簡 常時展示中

時代を撃て・多喜二